安藤ゆき『不思議なひと』

知らないマンガ家さんでジャケ買いだったけど面白かった! これはおすすめ。
時緒という先生に片思いする女の子と、「過去から来た高校生の時緒」と名乗る男の子のお話の表題作より、2作目、3作目の方が面白かった。コマの使い方とか絵の感じ、話の転がし方がよいです。ちょっと話の終わらせ方がもう一工夫ほしいところがありましたが、まあそれは瑕瑾というものでしょう。
調べてみたら初のオリジナルらしい。今後に期待。

追記:amazonには表紙がないのか! むー。あ、試し読みがあるんだ。リンクしてみます。

るびきち『Ruby逆引きハンドブック』

Ruby逆引きハンドブック

Ruby逆引きハンドブック

るびきちさんの久々の新著。
えー、この本は、立場上『Rubyレシピブック第2版』の競合になるので、バイアスの入った紹介になります。ご了承ください。
という前置きを置いた上で。
や、この本はすごく力が入っています。ページ数は目次と索引を含めて750ページ強で、版型は『Rubyレシピブック』とかと同じA5サイズですが、字の大きさが小さくなっているので、ボリュームはそれ以上にあります。
このボリュームは、挙動の細かいところの説明、1.8.6と1.8.7、もしくは1.9.1との違いについての説明に費やされています。この細かさはすごい。大変な労作だと思います。
ただ、『Rubyレシピブック』の著者の一人として言うならば、逆引きリファレンスとしては、ちょっと情報を詰め込みすぎなきらいがあるんじゃないかなあ、と思います。というか、これは正解はないのかも。

  • 逆引きしやすくするには見出しを増やすべきだが、そうするとページ数が増える
  • ページ数が増えると物理的に使いづらくなるし、値段も上がる(はず)

悩ましいですね。

そんなわけで、対象を分けるとしたら↓こんな感じでしょうか。

  • 情報量を求めるひと、1.8.7や1.9の挙動を知りたいひと:Ruby逆引きハンドブック
  • 1.8の枯れた部分について、見やすさを重視するひと:Rubyレシピブック

何にしても、『レシピブック』で十分、という人も、一見の価値はあると思います。

あと、気づいたtypo。細かいところですが、12章の「225:URLにある内容を読み込む(p532)」ですが、コメントで「Ruby 1.8.6では「Array#length」を使う」になっているのは、たぶんString#lengthかString#sizeの間違いのような気がします。

星澤隆『Rubyでつくる検索エンジン』

Rubyでつくる検索エンジン

Rubyでつくる検索エンジン

Suzakuのひとが、Suzakuを元に検索エンジンの説明をする話。
ひたすらコードの話が続くので、コードに興味がある人にはよさそう。逆にコードそのものよりも、考え方とか原理とかの説明がほしい、という人には向かないかもです。

神崎正英『セマンティックHTML/XHTML』

セマンティック HTML/XHTML

セマンティック HTML/XHTML

セマンティックWebの最新動向がわかる本。
『ユニバーサルHTML/XHTML』の神崎さんなので、内容については安心して読めるのですが……個人的に、セマンティックWebにはいろいろ懐疑的です。

セマンティックWebって、もう20世紀から考え方はもちろん、仕様や実験的な実装は出て来ていたのにも関わらず、その進捗は思わしくないんじゃないか、と思っています。現状ではRSSは普及したものの、RSSの元になった(というにはRSSにはいろんな歴史がありすぎて語弊がないわけでもないのですが)RDFそのものについてはあまり普及しているようには見えません。やっぱり自由な三項対を管理するのは、人間にとって辛すぎるんじゃないかなあ、だからRSS2.0程度の簡易なものしか扱えないんじゃないかなあと思わないでもないです。
そういう意味では、RDFaには期待してます。これでボキャブラリが安定して、検索エンジンとかの利用するツールが普及すれば、また今までとは違った展開があるんじゃないかなあ、とか。

とはいえ、この本ではそういう葛藤が見えてこないんですよね。あくまで現状を淡々と説明する、という。もちろんこれはこれで抑制されていてよいスタイルだとは思うんですが、今後も順調に進むとはあまり思えない(これまでの経験上)分野について書く以上、もう一歩突っ込んだ解説や予測も欲しかったかなあと思うのでした。

あと、CURIE (http://www.w3.org/TR/curie/) については初めて知りました。これはどうなんだろう……。

日経コミュニケーション編『ARのすべて』

ARのすべて ケータイとネットを変える拡張現実

ARのすべて ケータイとネットを変える拡張現実

2月に行われたITProのARビジネスについてのカンファレンスの講演を元に、他にもいくつかの記事を再編集しなおして本にまとめたもの。

ARについてはARtoolkitの本が何冊か出てましたが、ビジネスへの応用面についてはこれが初めて、でしょうか。そういう意味では興味深い本ではありますが、エンジニア向けではないかも。そんな中でも、AR絡みの研究を長らく続けてこられた暦本さんの文章が読めたのはうれしい感じでした。

Robert C.Martin『Clean Code』

Clean Code アジャイルソフトウェア達人の技

Clean Code アジャイルソフトウェア達人の技

ボブおじさんことRobert C. Martinが、きれいなコード(clean code)について書いた本。あ、でも、これって一部の原稿は他の方が書かれてるんでしょうか(いくつかの章の見出しに署名がある)。

この本については、ちょっと簡単に評価できない感じです。序文によれば、この本は3つのパートに分かれていて、255ページから始まる第14章(たぶん。序文には章が明記されてない)〜第16章までがこの本の2番目のパート、ケーススタディ編であり、かつ一番のコアな部分らしいのです。ここだけで100ページ以上。まじすか。
それまでの最初のパートは、2番目のケーススタディに必要な知識を説明していて、その知識を元にケーススタディに挑まないと、本当の意味できれいなコードを書けるようにはならない、というのが著者の主張らしいです。ううむ。先は長そう。とりあえず現時点では評価は保留します。

あと、翻訳が花井さんなのに、花井さんの訳者あとがきとかまえがきがついてなかったのが超残念でした。もったいないー。

『この定理が美しい』

この定理が美しい

この定理が美しい

数学な人を集めて、自分が美しいと思う定理について簡単に紹介した本。定理の数は約20。最後には「きみならどう書く」ならぬ「きみならどの定理を選ぶ」のおまけつき。

なんていうか、さすが数学、というところでしょうか。なんせタイトルがすごい。というか美しい。プログラミングの本とかじゃつけれないですよねえ、こんなタイトル。『このコードが美しい』とか。せいぜいカタカナで『ビューティフルコード』が限界です。

内容については、λ計算の合流性の定理についての章があるので、λな人は必読、かも。いやまあ別に新しい何かが書いてある訳でもないんですが。

上阪徹『六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス』

クックパッドがどういうサイトでなぜ人気になったかを説明する新書。
コンセプトの話や使われ方の話などなど盛りだくさんなのですが、アクセスログから動線を解析する話が面白かったです。やっぱりここまでやるんだなーというか。

あと、このタイトルは微妙かも。本当は、「六〇〇万人の女性に支持される「クックパッド」」は、実は最初のうちはなかなかビジネスになってなかった訳で、その支持をいかにビジネスにつなげていくのか、という辺りが面白い。もちろんそのビジネスを成功させるには百万を超えるファンが必要で、そのファンを支えるのは真摯にファンに向き合って来たことの結果、ということなんでしょう。

最後の方の引っ越しパーティの話のエピソードもいいですね。当たり前のような行事についても、なんでやるのか、というところから考え直していく、と。

個人的には、例のクックパッド問題の件についても触れてくれればよかったんじゃないかと思わないでもないです。会員と運営側とのトラブルってコミュニティサイトではほとんど必然のように起こる訳で、それをどのように対処したか、どのような教訓を得て、どのように活かしているか、というのは興味深いところなので(この辺りは、有料か無料かについてや、掲示板等の交流の機能をそぎ落としていって、結果的にレシピに集中したシンプルな作りになっていったことと関係があるようにも見えますし)。……とかっていうのは、外野から見た下世話なわがままあるいはきれいごと、なのかもしれませんが。

ドナルド E. クヌース『The Art of Computer Programming(2)』

The Art of Computer Programming (2) 日本語版 Seminumerical algorithms Ascii Addison Wesley programming series

The Art of Computer Programming (2) 日本語版 Seminumerical algorithms Ascii Addison Wesley programming series

超いまさらですが、なんかTAOCPは在庫僅少だそうなので(品切れではないそうです。ちょっと安心。でも今のうちに買っといた方がいいかもですよ!>ためらっていた人)。

しばらく読みそうもないですが、いつか読みたい。