エンジニアじゃない方でも新年に読むのをお勧めしたい2冊

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。ちょっとまだ仕事が取り込んでいるので、今年の抱負みたいなエントリはまた今度。

さて、昨年末はエンジニア向けの本を紹介しましたが、某弊社では非エンジニア向けの本を最近扱い始めまして、その2冊がちょうど新年に読むのに向いているんじゃないかなあと思うのでご紹介させてください。



 ケヴィン・ケリー著作選集 1
(ケヴィン・ケリー著、堺屋七左衛門訳 達人出版会発行 PDF/EPUB


まずは『ケヴィン・ケリー著作選集 1』です。おかげさまで好評で、今までにだいたい3,000部弱がダウンロードされています(具体的には、アカウント作って0円で購入された方が約400人、アカウント作らずにそのままリンク経由でダウンロードされたのが2500件以上、というところです。単位が違うので単純には合算できないんですけど、アカウント作ってゼロ円購入された人が何回ダウンロードしているかは集計してないので、おおよその目安としてそのまま足しています)。

そういえば著作選集を出す経緯は今まで書いてなかったのでここに書いておくと、きっかけは2つありまして、一つは下に挙げるyomoyomoさんの『情報共有の未来』、もう一つはWikiばなです。

すでにyomoyomoさんの書かれた記事を読まれている方はご存知かと思うのですが、Wired Visionの連載にも、yomoyomoさんはケヴィン・ケリーのことを何度か書かれているのでした。私も「千人の忠実なファン」とかはネットで読んでいたものの、あんまり明確には記憶しておらず、ケヴィン・ケリーその人のことも特に意識はしていなかったのですが、これでなんとなく意識するようになっていました。

そしてちょうどそんな頃に、Wikiばなが開催されたのでした。

テーマとしてはsaveMLAKということで、それはそれで面白かった( SemanticMediaWikiとかうきうきウィキまつりとか)のですが、その時にちょうど堺屋さんがいらっしゃっていて、ご挨拶させていただいたのでした。とはいえ、お会いした時には、「あー、yomoyomoさんの原稿に出てくるやつを翻訳したひとだ!」くらいに思っただけで、あんまり詳しくはお話しできなかったのですが。

Wikiばなが終わってうちに帰った後で、堺屋さんのサイトでケヴィン・ケリーのエントリをいくつか読んでみたら、一つ一つはちょっと短くて細切れの印象もあるけど、まとめて読むとなかなか面白そうでした。なので、まずはいくつか勝手にまとめてPDFとEPUBを作って読んでみると、やっぱり面白い。これは達人出版会で出したいなあ→でもCCでNCかあ→まあ無料でもいいかも、yomoyomo本の宣伝にもなるかもしれないし、無料のコンテンツも欲しかったし、ということで堺屋さんに「こんな本を出したいのですが…」とお願いしてみたのでした。

「無料のコンテンツが欲しかった」というのは、やっぱり某弊社の事業を宣伝するには、宣伝用にタダで配布できるコンテンツがあると、何かと話をしたりするのに便利なわけです。また、話す相手がエンジニアじゃない場合もあり、そういう時にはあんまり弊社のコンテンツだとピンと来ない場合もあって。とはいえ、ふつうに弊社で発行しているコンテンツは、著者さんとの契約もあるので、むやみにタダで配るわけにはいかないのです。そういう面では、内容的にも(だいたい電子書籍とかの話をしたい相手はこの本の内容とかにも親和的なことが多いので普通に勧めやすい)形態的にもちょうどよかった、というところかもしれません。

という話はさておき、本書の内容についてですが、近未来、という語感よりももっと近い未来と現在について書かれたエッセイ集、という感じです。仕事柄、ネットや電子書籍については興味あるので楽しめるという側面もあるのですが、特にそういう仕事と興味ないひとでも、日常的にネットを使っているくらいのクラスタの人であれば、いろいろ面白いんじゃないかと。とはいえ、出てくる内容はあんまり日常的というか、時事的な話題ではないので、少し長いスパンで物事を考えたい年始に読むには向いていると思います。

おすすめとしては、やはり『無料より優れたもの』と、『千人の忠実なファン』『忠実なファンの支援による生計の実態』『千人の忠実なファンの反例』『みんな払いたがっている』とかでしょうか。この辺りは本書の特徴的な章だと思います。あとは少し地味ですが『ボトムアップだけでは不十分』なんかも、ボトムアップトップダウンの組み合わせ、クラウドソーシングの可能性と限界について考えさせられる良い章だと思います。どうでしょうか。



情報共有の未来
yomoyomo著 達人出版会発行 PDF/EPUB


そして2冊目はyomoyomoさんです。そもそもyomoyomoさんの本を出したいなあと思ったのは一昨年くらいのことで、最初の本を販売する前からyomoyomoさんの書かれたネット記事を勝手にコピってyomoyomoさんに見せたら嫌がられた(最初のページが「I can't blog」だったこともあって)、みたいな経緯もあったのですが、1年以上かかってようやく出せたので感慨深いです。いやでも『Technical Knockout選集』もいつか出したいので、また改めて相談させて下さい。

さて『情報共有の未来』の内容ですが、こういうのは電子書籍に向いているんじゃないかと思いました。その時々のアクチュアルなニュースや話題について書くのはやはりブログかメルマガみたいな軽めのメディアが向いていると思うのですが、それだと力を入れた文章でも次々消費していく形になりがちな上に、時間が経つとそのままでは読まれにくそうな気がします。かといって、時間がたってさてまとめようというにも、紙の本として読むにはやはりその「少し・だいぶ前の話題」というのがネックになって、あんまり売り物になるかどうかの判断が難しそうです。そういうコンテンツに対して、比較的低リスクで届けられる、というのは、電子書籍の形態がすごく合っているような気がします。

先ほどの『ケヴィン・ケリー著作選集 1』とは対照的に、あちらは少し未来の話ですが、こちらは少し過去の話になっています。とはいえ、最新の章は去年書かれたものですし、それを現在から振り返ってみている「あとがき」もついているので、比較的読後感には相通じるものがあります。そもそも先ほど書いた通り、ケヴィン・ケリーはこちらにも出てきますし、またそれと対になる形でニコラス・カーなども出てきているので、話が似てくるのは当然と言えば当然なのですが。


というわけで、正直某弊社の宣伝も兼ねているわけですが、とにかくみんなに読んでほしいなあと思うので紹介してみました。どうぞよろしくお願いします。