オライリーも技評もそれ以外も頑張ってると思う
を読んで、なんかむかついてきたから書いておきます。
確かに、オライリーは一つのブランドで、その安定感というか安心感はありますし、「WEB+DB PRESS plus」シリーズも優れた本が多いのでうれしい限りですが、それはさておき「まだ枯れきっていない分野で日本語オライリー本が存在感を示した最後の例」とかいうのは全く理解できません。
2011年に出た本だけでも、『JavaScriptパターン』『ウェブオペレーション』『iPhoneアプリ設計の極意』『ゲームストーミング』『Hacking:美しき策謀 第2版』『ビューティフルビジュアライゼーション』『デザイニング・インターフェース 第2版』くらいはありましたっけ。あと忘れていけないのは「Make」方面。「Make」誌はもちろん、数年前の本では『Making Things Talk』『Prototyping Lab』、今年だと『XBeeで作るワイヤレスセンサーネットワーク』とか、MTMも含めて、少なくともこの国のフィジカルコンピューティング、電子工作に関する日本語オライリーの貢献というは少なくはないはず。そうそう、コンピュータ書じゃないけど『Cooking for Geeks』もありましたね(追記:あと、『Making Software』もありました。ソフトウェア開発におけるエビデンスにフォーカスした本で、こういう本を見るとさすがオライリーだと思いますよね?)
これだけの本を出しておきながら、「最近の日本語オラ本にはガッカリ」とか、ちょっと意味がわかりません。
もちろん、ジャンルを限ればオライリーより他社出版社さんの方がいい本を出している、ということもあるかもしれません。が、それはその人の読む本の幅が狭いだけで、あらゆる分野で最強の本を出す出版社などはさすがにありえないでしょう(それでも上記を見れば手広くよい本を出していることはわかると思います)。
また、やっぱり日本の出版社さんが頑張っている、というのももちろんあります。そこは日本のエンジニアの書き手さんと一緒になって、この国の技術力の底上げに力を合わせて頑張っているんだと思います。最近ではタイムラグつき(確かにこれは翻訳書では避けることのできない問題ではありますが、「致命的」というほどではないでしょう)の出版になる日本語オライリー本を含めた翻訳書よりも、より優れたものをタイムリーに届けることのできるポテンシャルを持つようになりました(でもぶっちゃけ日本人が書く日本語本でも半年で出したりするのは大変ですよ?)。これは率直に誇っていいところだと思います。が、それを実際に実現するのは、それを支える方々がいるからに他ならないわけで、そのような方々(もちろん海外書の翻訳・監訳に関わっている方々と少なからず重複しています)への感謝は尽きません。
というわけで結論としては、翻訳も執筆も日本のコンピュータ書出版界はたいへん頑張ってると思います。日本人が書いた本も日本人が訳した本も両方あっていいし、また両方役に立っています。というか、本気でそうじゃないと思ってる?

JavaScriptパターン ―優れたアプリケーションのための作法
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ウェブオペレーション ―サイト運用管理の実践テクニック (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: John Allspaw,Jesse Robbins,角征典
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iPhoneアプリ設計の極意 ―思わずタップしたくなるアプリのデザイン
- 作者: Josh Clark,深津貴之(監訳),武舎広幸,武舎るみ
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ゲームストーミング ―会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム
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Hacking: 美しき策謀 第2版 ―脆弱性攻撃の理論と実際
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ビューティフルビジュアライゼーション (THEORY/IN/PRACTICE)
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デザイニング・インターフェース 第2版 ―パターンによる実践的インタラクションデザイン
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XBeeで作るワイヤレスセンサーネットワーク (Make: PROJECTS)
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Cooking for Geeks ―料理の科学と実践レシピ (Make: Japan Books)
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Making Software ―エビデンスが変えるソフトウェア開発
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ちょっと余談ですが、本についての語りと言えば、某ださこん等のイベントでu-kiさんがするSF本の紹介のことを思い出します。u-kiさんの紹介は、だいたい元の本より数割増し、下手をすると数倍増しに面白く語るので、u-kiさんの話を聴いてなにそれ面白そう! と思って読んでみても実際にはぜんぜんつまんない、みたいなことがよくありました。またu-kiさんに騙されたYo! みたいな気持ちが半分、でもあの語りは面白いなあというのが半分。それもやっぱり読み手の技、読み手の芸ですよね。
別に一人で黙って読んでる分には好きに読んで好きに評価すればいいわけですが、それについて広く評価を伝えるということは、率直に読み手の技量や態度が問われることだと思います。その本に書かれていることを、作者の意図やそれを超えたところまでも含めて読みとり、咀嚼し、読んでない人や読み終えた人に伝わることばにする。やってみると本当に難しい。
帯とか書評欄とかだとまた違うしがらみもあるかと思いますが、自由に本について語るときのその語り方というのは、本当に読み手が試されるなあと痛感します。やっぱりおっかないよね。いろんな意見があること自体はいいことだと思うけど。