ITエンジニアが年末年始の暇つぶしに読みまくれる2011年のコンピュータ書3冊+1冊+イベントのご案内

ご無沙汰してます。みなさんコンピュータ書読んでますか?

そんなわけで、2012年も例のイベントが帰ってくるのですが、そういえば先日、「ITエンジニアが年末年始に読んでおきたい厳選書籍 + α」を見つけたので、私もちょっと書いておきます。

普通におすすめしたいコンピュータ書は当該イベントでしゃべる予定ですので、そこはそれとして「年末年始暇そうだからとにかくいっぱい読むものが…」と言う方におすすめする3点を挙げておきます。

WEB+DB PRESS 総集編 [Vol.1?60]

WEB+DB PRESS 総集編 [Vol.1?60]

ASCII.technologies the DVD Complete (アスキームック)

ASCII.technologies the DVD Complete (アスキームック)

ソフトウェア・テスト PRESS 総集編

ソフトウェア・テスト PRESS 総集編

これらはみんな雑誌の総集編なのですが、WEB+DB PRESSがなんと60冊分(!!)、ASCII .technologiesが27冊分、ソフトウェア・テスト PRESSが10冊分を収録と、この3つを合わせるとなんと97冊分にもなります。1日10冊読んでも9日以上かかるこのボリューム、いくら年末年始はぼっちで暇すぎる方でも読み終わらないでしょう。しかも全部DVDとCD-ROMなので、遠くに帰省するあなたも重い本を担いでいったい何しに帰省してるのこの人? という実家の方々の冷たい視線に晒されることなく、3枚のメディア(とそれを読めるPCとか)さえあれば安心という驚きのコンパクト設計。とにかく時間が余って仕方がない、という方にはきっとご満足いただけるかと思います。


とはいえ、もうちょっと手頃な分量の本で、じっくり楽しめるものはないの? という方には、やはり2011年を代表する(と私が勝手に思っている)この一冊をお勧めします。

この本で提示される確率順位付けモデルは、ITエンジニアの方であれば頑張って理解していただいて「たった1個の本のランキング遷移を追いかけるだけで全商品点数から上位・下位の売れ行きの傾向まで推測できる(!)」という数学の凄みをぜひ味わって欲しいと思うのですが、そういうのは苦手な人でも難しめの議論をすっ飛ばして読んでいくだけで、本書の面白さは十二分に伝わるかと思います。議論についていける人は参考文献を追いかけるのも楽しいかもしれません(私はそこまで理解しきれてません)。とにかくおすすめ。


というわけで、これらの本を含め、2011年に出版された数多のコンピュータ書をふりかえる恒例イベントが、2012年1月14日(土)夜19時30分より、ジュンク堂書店池袋本店で開催されます。

以下は上記サイトにある宣伝文のコピーです。

『新春座談会 このコンピュータ書がすごい! 2012年版 〜2011年に出たコンピュータ書ならこれを読め!〜』


高橋征義(日本Rubyの会会長、読者側代表)×コンピュータ書仕掛人(出版社側代表)


■2012年1月14日(土)19:30〜


毎年恒例のコンピュータ書年間ふりかえり企画が今年もやってまいりました!
「新春座談会 このコンピュータ書がすごい!」が2012年も開催されます!


世界が大きく揺れたこの一年でしたが、コンピュータ書は粛々と発刊を続け、2011年も相変わらず2000点ほどのコンピュータ書が刊行されました。
その中から注目したい作品を数十冊ほど選び出し、1時間半の間に紹介し倒すというコンピュータ書好きのコンピュータ書好きによるコンピュータ書好きのためのこの企画。おかげさまで毎年満員御礼で、コンピュータ書界隈における新春の風物詩としてすっかり定着したことにしたい今日このごろです。


そんなわけで、今年も「このコンピュータ書がすごい!2012年版」と銘打って、この2011年に発売されたコンピュータ書を振り返ってみることと相成りました。
ベストセラーやロングセラーや話題作だけでなく、ほとんど一発ネタのような本からここをどうにかすれば傑作だったのにという本まで、見逃せない本の数々をご紹介できれば幸いです。

講演者は昨年同様、コンピュータ書を生み出す最前線で活躍されている出版社の方々と、「日本Rubyの会」代表理事であり、『たのしいRuby』などの著者(共著)としても知られる高橋征義さんです。

というわけで、2012年も多分数十冊(さすがに100冊とかは避けたい…)の本をご紹介する予定です。もうお店の方では予約を受け付けているそうなので、奮ってご参加ください。よろしくお願いいたします。

『ケヴィン・ケリー著作選集 1』は面白いのでみんな読んで下さい

そういえばひょっとして某弊社の本ってこの日記で紹介したことなかったんじゃ……? と不安になった今日この頃、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

まあ、某弊社こと達人出版会の本は、ここを読んでるエンジニアの人にはオススメな本が揃っているので、気が向いたら買って欲しいは欲しいのですが、それはさておき今回の本は特別なので宣伝してみます。


 ケヴィン・ケリー著作選集 1
(ケヴィン・ケリー著、堺屋七左衛門訳 達人出版会発行 PDF/EPUB

何が特別かといって、まず既刊のプログラミングな本のようなエンジニアしか読まない(読めない)タイプの本ではなくて、普通に読める読み物本であること、そしてケヴィン・ケリーという知る人ぞ知る著名な著者による本であること、さらにそれにもかかわらずCCラインセスの自由なコンテンツであること、などなど、これまで出してきた本とは打って変わっておすすめしやすい本になっているのです。これはもう読むしかないですね!

もっとも、

という方も少なからずいらっしゃるとは思いますが、それはケヴィン・ケリーの紹介が遅れているこれまでの経緯の残念な結果であり、本来はもうちょっと知られるべき人だと思うので、この機会にぜひどうぞ。そして長らく翻訳を続けられている堺屋さんにはこの場を借りて改めて感謝。

【宣伝】『Rails3レシピブック』電子書籍版(PDF)が今なら1,800円!

というわけで遅ればせながらキャンペーンのご案内です。

http://bookpub.jp/books/bp/198

みなさまのおかげで絶賛好評発売中の『Rails3レシピブック』の電子書籍版が発売されました! 今回はアプリではなくPDF版になります。

ちなみに発売は某弊社からではなく、ブックパブさんです。

あと、一部で話題の「DRMフリー」についてですが、現状残念ながら印刷は不可になっています。いちおう印刷可でお願いしてみたものの、もろもろの都合から今回は見送りになった、とのことでした。「やっぱり印刷できるようになるべき!」と思われる方は、ソフトバンククリエイティブさんに熱い要望を出すと実現できるようになるかもしれません(ならないかもしれません)。「EPUBやmobiで欲しい…」という方も同様です。

お値段について、通常は2,800円のところ、キャンペーン期間中は大特価の1,800円になります。どうせ買うなら安いうちに、というみなさまはこの機会にぜひどうぞ。

アジャイル開発の反対はウォーターフォール開発じゃなくて「おまかせ」だと思う

メモ。

アジャイルウォーターフォールを対比させるのは違和感があった。ので、少し考えてみた。

アジャイルソフトウェア開発宣言にある「包括的なドキュメント」とか「契約交渉」とか「計画に従う」とかと、「対話」「顧客との協調」「変化への対応」とかは、わりとばらばらなお題目が並んでいるように見える。少なくともこれがMECEだと思う人はいないと思う。

ばらばら並んでいる項目の共通点、類似点は何か。それはたぶん、「顧客」と「開発者」という2つのロールを仮定して、そのロールの人同士の間でのコミュニケーションコストを最大化する(という言い方が悪ければ「最大限許容する」と言い換えてもいい)というものだろう。文書や契約や計画は、あらかじめ(多少はコストをかけて)まとめておけば、それ以降のコミュニケーションは省略できる(ような気になる)、というものだろう。ツール・プロセスも同様だ。一方で、個人や対話、顧客との協調は顧客側もコミュニケーションコストを支払わざるをえない。変化に対応するというのも、変化が自動的に開発者のところに現れるわけではなく、何がどう変わり、それによってどうしたいのかを顧客が伝えないことには始まらない。動くソフトウェアも、それが顧客からフィードバックを得られるために使われなければ何の意味もない。

言い方を変えると、アジャイルな開発ではコミュニケーションのコストがかかる。むしろ、そこにコストをかけることによって、プロジェクトを成功をさせる、という方法だと思うとすっきりする、ような気がする。

その反対はといえば、要するにパッケージソフトを買ったり、Webアプリケーションをサブスクライブするようなものだ。そこでは開発者と顧客の間のやりとりはゼロがふつうだ。つまり顧客の支払うコミュニケーションコストはゼロで済む。開発側は、個別の顧客の言うことは耳も貸さず(とりあえず「大変貴重なご意見をありがとうございました」と返しはするかもしれないが)、良かれと思うものを実装する。それが良いものだったら使われ、良いものではない場合、最終的には捨てられる。そういうタイプのアプリケーション。

それはつまり「おまかせ」の世界だ。レストランに行けば、好みにあった食べ物が順番に出てくるようなイメージ。顧客としてはたいへん楽ちんだ。これ以上都合のいい方法はない。それで本当に望んだものが出てくるのであれば。

では、ウォーターフォールはどうなっているかというと、おまかせに比べればアジャイルに近い。最初に要件定義でヒアリングはするし、納品前にも何かしらのフィードバックは求める(はず)。ただ、アジャイルほどにはコミュニケーションコストはかけない。開発に際してお客さんに貼りついてください、なんてことは言わない。それは顧客にとってはコストであり、避けられるのであれば避けた方がよい、というのがウォーターフォールの発想だ。

コミュニケーションコスト小           コミュニケーションコスト大
<----おまかせ---------------------------- ウォーターフォール ---- アジャイル ---->

とはいえ、顧客とコミュニケーションしなければ、顧客好みのものが出てくる可能性は減る。エスパーでもない限り、開発側が個々の顧客の好みを知ることはできず、そのため成果物が定型化されてしまうのは避けられない。それならまさに顧客としては定型化されているパッケージなりを買ってくればいいだけで、開発を委託したり自社開発したりする必要がない。なので、最低限のコミュニケーションコストをかけるのは前提としても、それを極力減らしながら、求められるプロダクトを作る、という方向性がウォーターフォールの原則のところにある考え方だろう。

一方アジャイルは、コミュニケーションコストをそれなりにかける前提で、かけたコストを回収できるくらいのメリットがあるような方向性だと思う。それを助けるものとしては、ツールの支援だったり、あるいはファシリテーション的なものもあるだろう。顧客から「こうしてほしい」というリクエストが来るのは、顧客がコミュニケーションコストを支払っているからに他ならない。そのコストに見合うように、すぐにそのリクエストを反映したプロダクトが(1週間とかのスパンで、あるいは一瞬で)出てくる。それによって、コストに見合うお釣りを得る、少なくともそういう感覚を顧客に持たせる、という目標設定でアジャイルはできているような気がする。

アジャイルが度合いであるにしろ、どの程度アジャイルであるべきかというのは、要は顧客がどの程度コミュニケーションコストを支払いたいか、支払うコストによって改善されるものに顧客がどの程度価値を感じるか、という度合いによって決まってくるのだと思う。あまり手間暇かけずにそれなりのものがほしい、という顧客にアジャイルは合わないし、顧客自身が手間をかけてでもいいから欲しいものがあるというなら、ウォーターフォールは似合わない。

まとめ

アジャイルウォーターフォールはそれぞれ以下のようにまとめられるのではないか。

  • ウォーターフォール:コミュニケーションコストをあまり支払わないで済むようにしながら、プロジェクトを成功させる、そのための手法
  • アジャイル:コミュニケーションコストを十分支払う前提で、それに見合ったメリットを得る、そのための手法

せっかくの夏休みだから、今こそまとめて買っておきたいコンピュータ書5冊

と言えばやっぱりこれですよね。

いちおう念のために書いておくと、これは全部違う本です。TAOCPこと『The Art of Computer Programming』第4巻は5分冊になっていて、その第0分冊から第4分冊までがこの5月についに出揃ったのでした。たいへんめでたい限り。

最初に刊行されたのが2006年に出た第2分冊で、そこからばらばらの順番で刊行されたこの第4巻、はっきりいってまとめて買わないとどれを買ったか分からなくなることうけ合いです(<実際分からなくなった人。第0分冊があるのは確かなんだけど、それ以外の分冊はちょっと怪しい……)。この機会にぜひどうぞ。まあ今から読んでもこの夏休みの間に読みきるのはほぼ不可能だと思いますが。あと、ページ数の割にお値段がそれなり以上にするのですが、まあ気にしないでいただければ。

ちなみにこの本がどれくらい素晴らしい本なのかは『Corders at Work』に何度も何度も出てくるので、読まれてない方はこちらも合わせてどうぞ。

Coders at Work プログラミングの技をめぐる探求

Coders at Work プログラミングの技をめぐる探求

ついでに書くと、今年のコンピュータ書のベストは『Amazonランキングの謎を解く』になる予定なんですが、この本についてはまた改めて。

RubyKaigi2011が終わりました

どこへ消えてしまうの
なぜ すべては終わるの
壊れていくこころに
幻だけ残して
(鈴木祥子『水の中の月』)


開催期間中は、例年になくトラブルも少なく、最後に一番いい形を作れたのはたいへん良かったなと思っています。まあ、準備がぐたぐたしていたのは相変わらずでしたが……。


RubyKaigiが終わることについては、一言だけ書いておくと、要するに私の力量不足のせいではあります。誰よりも何年にもわたってここまで下地を作ってきてくれたスタッフのみなさんに対して申し訳ないところなのですが(だから最後のスタッフ紹介のところで言葉が詰まったんだと思うのですが)、そこは一般社団法人で借りを返したいところです。今はただ、RubyKaigiを支えてくれた方々へ、ありがとうの気持ちが伝われば。

今夜こそ

夜に羽ばたき出す鳥のように
空へこの両手を解き放って
高く 高く 手を伸ばす

あなたひとりだけと思った人を
たったひとつだけと願った夢を
今夜 今夜 ほどいて
(篠原美也子『夜間飛行』)

本を書きました

こんな表紙の本です。

最近改訂された本と並べるとこんな感じになります。

もろはしさんがいろいろと書かれていますが、Rails3の本としてはよい本なんじゃないかなあ、と思います。

発売日はまだ先なんですが、RubyKaigiで先行販売とサイン会をやります。

あと、ジュンク堂トークセッションをやります。

こちらもよろしくお願いいたします。

Rails3レシピブック 190の技

Rails3レシピブック 190の技