角川裕次『計算機プログラミングの基礎概念』がぜんぜん話題になってないことに絶望した件

Cとアセンブリ言語で学ぶ計算機プログラミングの基礎概念 - プログラムはプロセッサ上でどのように実行されるのか

Cとアセンブリ言語で学ぶ計算機プログラミングの基礎概念 - プログラムはプロセッサ上でどのように実行されるのか

この本、平台じゃなくて棚の方に面陳になっていたのを見かけ、気になったので読んでみたところ、意外に面白かったんで買ってみました。

プログラミング言語の基本的な概念をCを使って説明するにあたって、Cのコードをアセンブラコンパイルした結果も並べながら説明するという、『プログラミングの力を生み出す本』とかに似た風味の本です。あちらとの違いは、

  • ターゲットのCPUがIntel x86ではなくMIPS
  • アセンブラは全部は載せず、要所要所、必要最小限のところのみ抜粋しての紹介になっている

といった辺りですね。

それと大きな違いとしては、この本では最後の方になると「マルチスレッド」「スレッド同期」(要するにmutexとかmonitorとか)「例外」「非ブロッキング並行データ構造」とかいう章題が並んでいて、モダンな概念についての目配せが聞いているところ。いかにも今風でいい感じです。なんていうか、『プログラミングの力を〜』が現場での実戦叩き上げ系とでも言える一方、こちらは研究系というか、大学の学部向けカリキュラムに使えるよう、教科書としてチューンされている感じです。

教科書的なところといえば、例題で、

4-2 以下のビットパターンそれぞれをIEEE754単精度で表された数とみなし、十進数で示せ。
(a) 0 10000101 10101000000000000000000
(略)
4-3 以下のビットパターンそれぞれをIEEE754倍精度で表された数とみなし、十進数で示せ。
(a) 0 10000000101 1010000000000000000000000000000000000000000000000000
(略)

とかって載ってるのも、一瞬ネタなのか不安になりそうで素敵です(引用の桁数は間違ってるかも)。森北出版がついに本気出してきた感があります。

ていうか、この著者名ってどこかで聞いたことあるような……と思ったら、VFlibとかTTYPLAYERとかCAMPUS LIsPの人じゃないですか! それを先に言ってくれないと!(<逆切れ)

http://www-masu.ist.osaka-u.ac.jp/~kakugawa/hacks/
(以前のサイトの方が馴染みのある人が多いかも)

にも関わらず、はてなでもtechnoratiでもgoogleブログ検索でも、この本に触れているblogはものの見事にないようです。もったいない。森北だからスルーされてたんですかね……。

あ、amazonでは『Cプログラムの中身がわかる本』も近いと書いてありますね。こっちは読んでないです(って、これも今年の本なのか! うう、ノーマークだった……明日札幌で探すか……)。つか、教科書向けにかっちり書いてある本に対して、「先に出ている類書で、簡潔で分かりやすい本があります」というのは別に欠点の指摘にはなってないような。というわけで、手堅い記述が大嫌いというひとでなければ、ふつうにお勧めできる本だと思います。