新井素子『ひとめあなたに……』

だがしかし。Railsよりも何よりも、今月は新井素子ひとめあなたに…』の新装版というか、新しく手も入れてある(らしい)版が出るのですよ!!! しかも解説は東浩紀。何この素敵な人選。素晴らしすぎる。

http://www.tsogen.co.jp/np/detail.do?goods_id=3852

あとがきもWebに載ってます。本で読みたい!という人は読んではいけません。

http://www.tsogen.co.jp/web_m/arai0805.html

ひとめあなたに…』については何度か書いていますが、素子さんの私的ベストで、ということはすなわち私にとってはあらゆる小説の中でのベスト、です。素子さんの文体といい、怖さといい、テーマ設定といい、語り口といい、あらゆる良さが全力で詰め込まれていて、まったくもって無駄がない。
これがしばらく入手しづらい状況にあったのはいろいろ切ない気分でしたが、新しくなって何よりです。手を入れてしまっているのはちょっと怖いけど。大丈夫かなあ。いやいや大丈夫でしょう、素子さんなら。

旧文庫版の赤川次郎さんの解説が読めなくなってしまうのはざんねんですが、東さんならさらに素晴らしい解説を書いていただいてるんだと信じます。でも、赤川さんの解説も好きだったので、ちょっと引用。

ともかく、今は「天才」が、あまりに安っぽく大量生産されすぎている。
(略)
大体、「天才」などと呼ばれるのは、死んでからでいいのじゃないかしら。せいぜい、老境に入り、その評価が定まってからで。
だから、僕も今のところ新井さんを「天才」とは呼ばない。しかし、たとえば五十年後に天才と呼ばれているのは誰か、という賭けをするとしたら、僕はこの人に賭ける。
赤川次郎ひとめあなたに…』解説より)

たとえば、新井さんが三十歳、四十歳になったとき、こういう作品を書くとは思えない。もっともっと、構成とかバランスに気を配った書き方をするだろうから。
その意味で、『ひとめあなたに…』は、やはり二十歳という若さが生んだ作品なのだ。それが未熟さではなく、「八方破れの完成度」とでもいうしかない、みごとなバランスを達成しているところが凄い。
(同上)

というわけで、Railsレシピ本と合わせて買っていただけるとうれしいです。