タアモ『恋月夜のひめごと』

恋月夜のひめごと (フラワーコミックス)

恋月夜のひめごと (フラワーコミックス)

この前まで連載してたやつの単行本化。あと、短編が一つ。
表題作は大正浪漫風で禁じられた恋の物語。今までの単行本とは作風が違っていて興味深いのだけど、これは賛否両論でしょうねえ。ラストの短編の方が今までの読者も安心して読める佳作かも。

円城塔『Boy's Surface』

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

ピンクがまぶしい表紙。

表題作はSFMで読みました。初恋、というよりも片想いの物語。ちょっと数学っぽい意匠をまとわせてはいるけれど。

誰かと、誰かを想像することを一致させる極限。それがレフラーの目指したものだ。

そしてこの物語自体がその構造を反復していて。こんな物語の読者と、この物語の読者を想像しながら物語を書き綴ることの極限。それこそが作者にとっての物語なのでしょう。

それ以外はあとで読む。

武井一巳『7日でマスター Ruby on Railsで作るWebアプリケーション入門』

とうとう2.0対応のRails本が! このタイミングでばりばり2.0系はないだろう……と思ってざっと見たところでは、わりと2.0をフォローしてくれてるかも(でも、2.0.1っぽいのでSQLite3の説明はないみたい)。

もっとも、対象読者の知識は少なめに設定されていて、RubyMySQLの説明も丁寧にしているので、説明できてる範囲は20分で作れる掲示板+RMagickとFileColumnプラグインくらいまでです。そういう意味では物足りないかも。でも、formではform_for()を使ってるし、テンプレートも.erbになってるし、その範囲内では2.0を味わえそう。

まつもとさんのこと

メモ。

まつもとさんのすごいところはいろいろあるけど、「言語処理系でご飯を食べよう」と思い立つところと、それを実現してしまったところだと思う。

ふつう、オープンソースの言語処理系を開発することを仕事にする、なんて思いつかない。いや、素人は思うかもしれないけど、言語オタで職業プログラマの人なら、まあたいていありえない。まつもとさん自身もそう認識してたみたいだし。

http://www.rubyist.net/~matz/20030726.html

なんだけど、まつもとさんはそれで本当にご飯を食べてるのだった。

それは自分の価値を正しく見積もって、それを売ってる、ということ。要するに「自分」を商品としてビジネスをやってる。そう、まさに商品は「自分」。なんせ「自分」の成果物の方は無料なので、ふつうの意味では「商品」になってない。そういう特殊なものを商材として、まつもとさんはビジネスをやって、そして現在のところ成功をおさめている。すごい、としか言いようがない。

このまつもとさんのセンスは、非常に特殊なビジネスセンスですよね。まつもとさん以外に人に役に立つとは思えないけど、まつもとさん自身には非常に役に立つというか、人生そのものになりうるセンス。まつもとさんにはそれ以外のビジネスセンスがぜんぜん期待できなさそうなところも含めて、とても幸運だったのだなあ、と思います。他人事ながら。

……ということを、↓このエントリを読みながら思いました。

http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20080122/p1

そういえば札幌でもちょっとしゃべったけど、まつもとさんに求められているのは、一般的な意味での技術力、ではないと思う。

例えば、リリースマネジメント能力、とかは、もちろん求められていないわけじゃないけど、それほど強く求められてはいない。だって、リリースマネジメントがどんなにうまくできたところで、そういう能力を持ってる人間はそんなにいないわけじゃない(はず)だし、まつもとさんがそれをうまくできたところで、Rubyがあと10年は楽しい開発が続く言語になるわけでもない。まつもとさんに求められているのは、もっとこう、Rubyが面白い言語であり続けるための、何か、なのだと思う。

だから、まつもとさんが、リリースマネジメントを理解している人にぼこぼこに言われるのは、ある意味仕方のないことなのかも。まつもとゆきひろという資源【リソース】は有限で、それはまつもとさんにしかできないことにしか割くべきではないはず。

そしてもちろん私自身にも同じことは言えるわけで。私程度の技術的、あるいは人間管理的スキルを持った人間はRuby界隈にも掃いて捨てるほどいるわけで、その中で私がRuby界隈の中で目立つ位置にいることは、そういうスキルではない何かを求められているから、と認識するべきなのだ、と思う。それが何なのかは(実は)よくわかってないのだけれど。