新規サービスサイト制作の受託開発はなぜ上手くいかないのか

メモ。

自分で自社サービスを運営する立場になってわかったこと。あんまりよそで言われてないような気がするので書いてみます。ちなみに業務システムとかは関係ないです(というのは最後にもちょっと触れます)。

ふつう、受託開発では、9割がた成功する、というか失敗しないように開発の体制を組みます。まあ仕事で請けているので当たり前の話ですね。もっとも、先方のスケジュールや予算の都合で、7,8割くらいになる場合もあります。その場合は始める前から残念感というか貧乏くじ感があったりしますが、断れない場合もあるので仕方ありません。それでも、基本的にはそんなに失敗しないようなスキームにしようとするはずです。

ところが。新規にビジネスとしてサービスを立ち上げようとする発注側に立ってみると、「9割がた成功する」という基準はちょっとありえないことに気づきます。言ってみれば、新規サービスを作るということは、新規に事業を起こすことと変わらないくらいリスキーなことです。9割も成功するビジネスがあったらみんな知りたくて大騒ぎするに決まってます。確率はほとんど正反対で、9割がた失敗するのが当たり前の世界です。もちろん成功しやすい条件を満たすようにしていけば多少は変わるのかもしれませんが、いずれにしろごくごく低い可能性でしかありません。

この開発側と発注側の差、開発側が「当初の想定通りのものを作る」ことが成功条件になっているのに対して、発注側は「ビジネスとして成功する」が成功条件になっている、という大きな違いこそが、失敗に陥りやすい根本的な要因になります。

このような前提を理解すると、開発側が実現しようとする「9割がた成功する」ための布陣、というのは、発注側にしてみれば無駄のカタマリに見えてきます。そもそもこの(新規)ビジネスそのものが1割程度の確率でしか成功しないのに、そこだけ手厚くコストをかけてどうすんの? という気分。もっと大雑把でもいいし、また時間を稼ぎたい。どうせ9割がた捨てるんだから。そういうスタンスが合目的的な態度になります。

しかしながら、開発側としてはここまで割り切るわけにはいきません。自分がサービスの成功に関与していなければ、開発の成否のみが自分の責任となり、失敗したら問題になります(発注側としても、開発側に責任をとらせたくなる。そもそも9割失敗する世界なんだから、コスト削減のためにも誰かの責による失敗については相手のせいにしたがる)。なので、9割捨てるアプリの開発についても、それ相応の安全性を求めざるをえません。

ここに、価値(感)の相違が生じ、それに付随した問題が生じます。

この話は、発注側の技術的な理解が云々とか、アジャイルウォーターフォールかどちらかが云々、といった議論とは全く関係がありません(若干アジャイルの方が有利かも)。開発側と発注側、それぞれの立場に違いがあるということそのものが、開発が失敗する可能性を高めることの原因となっている、ように思われます。また、前述した通り、業務システムとかは9割失敗とかはないと思うので(そんなことない?)、ちょっと違う話になるはずです。あくまで、その開発が新規ビジネスとなるような場合です。

解決策、はよく分かりません。この話にオチはありません。ただ、難しいなあ、と思っただけです。