小田光雄『出版状況クロニクル』

出版状況クロニクル

出版状況クロニクル

Webの方はここのところ読んでいたのですが、本になったという話を聞いて、買って読んでみました。

んー、前著の『出版業界の危機と社会構造』とかは読んでなかったので、あんまり読めてないような気もします。本書は状況論が中心で、その背景に関する事実や著者の見立てとかはまとまってはなくて。もっとも、その分状況論の部分は、フィルタがかかってない生々しさがあって読ませます。

CCC=TSUTAYAブックオフと日昄、という図式は多少陰謀論めいた雰囲気もないわけではない(どこまで狙ってやってたのか/やってるのかは不明で、案外成り行きでなった動きもあったんじゃないかと邪推)ですが、大まかな動きとしていろんなところが次の世代の形を模索しているのは確実なんでしょう。プレイヤーの関係を図で書くと楽しそう。

もっとも、そうは言ってもそういう動きにコミットメントしてる人はごく少数で、多くの関係者はその流れに翻弄されるだけなのかも、という思いもあります。

本については最後の章はWebの連載にはない書き下ろしで、そこも面白かったです。特に、ブックオフ等の古本文化ができたのは世界最高レベルの製本技術によるものであり、何度読んだり手荒に扱っても本が壊れないというその技術のおかげで同じ本が何度も市場で流通される「循環市場」が形成できるようになった、という指摘や、出版/配本の激変は第二次大戦の前後ですでに一度怒ったことであり、今回の動きはそれにそっくりであるという指摘、さらに雑誌を読む文化は激減しているが、書籍を読む文化そのものはそう簡単になくならないだろうから、書籍のみで利益を上げる仕組みを作り上げるのが急務、という指摘は興味深かったです。あと、ブックオフの株主がすったもんだしてるのも初めて知りました(が、これは無知なだけかも)。