『エンジニアのための時間管理術』の一番すごいところは「おわりに」だと思う

Software Design 2009年1月号には、特別付録小冊子がついています。名付けて、「新人応援! SD執筆陣が薦めるこの1冊」。
この企画、「このコンピュータ書がすごい! 2009年版」の作業用MLでも話題になりまして、参考までに私も買ってみました。

Software Design (ソフトウエア デザイン) 2009年 01月号 [雑誌]

Software Design (ソフトウエア デザイン) 2009年 01月号 [雑誌]

この企画というか、選書についてはまた後で何か言うかもしれませんが、ここで書いておきたいのは宮原さん(OSCではお世話になっております)の勧める『エンジニアのための時間管理術』について。

この本、私も好きな本です。が、非常に残念なことに、私がこの本の中で一番好きなポイントが、この評には書かれていないのです! ショックでかい。というわけで、僭越ながら不肖私が書いておきます。

本書はある種の「ライフハック本」と見なすことができます。ITエンジニアの中でも、ネットワークエンジニアの業務に特化したそれです。が、本書は最後の最後でその枠組みを越えます。この本の「おわりに」では、凡百のライフハック本では触れられない、重要な問いかけとその答えが書かれているのです。

それは、「自身の業務を効率化したためにできた時間を使って、何をするか」です。

 本書のテクニックを実践すれば、毎週数日とまではいかないにしても、数時間は
節約できるかもしれません。1日に1時間程度節約すれば、週4日の労働時間で同
じ量の仕事をこなすことができます。
 では、この自由時間を使って何をしますか。

この本では、それに明確な答えを与えます。

筆者にもっとよい考えがあります。
この新たにできた自由時間を使用して、悪と戦うのです。
(強調は引用者)

……ええええええ。これはちょっとやばいんじゃないの? と一瞬思ってしまうのですが、筆者の主張は実際にはさほどエキセントリックなものではありません。続く一文では、こう語っています。

筆者が毎日のように目にする最もありふれた悪は、家族と過ごす時間を会社に奪われることです。

まあ、こういうことを「悪」とするなら、「悪と戦う」と言うことはおかしなことではないですね。
実際、著者が書く「悪との戦い方リスト」は以下のようになっています。

  • 週に40時間働いたら家に帰る
  • 大切な相手と過ごす時間を増やす
  • 子供と過ごす時間を増やす
  • 両親やあなたの人生において重要な人に電話をする
  • 悪と戦う非営利団体を助ける(Web版)
  • 悪と戦う非営利団体を助ける(PC版)
  • 教育委員会に参加する
  • 公職に立候補する

……なんか最後の方になってくると、ちょっと違った世界に突入しているような気もしてきますが、そこはそれ、暖かく見守りたいところです。せっかく悪と戦っているんですから。

 悪との戦いは、行く先々にどんぐりを落とすことに似ています。ある場所に戻っ
た時に、何か素晴らしいものに成長していることもあれば、何もないこともあり
ます。ただし、ほとんどの場合は、自分が世界をどれだけ変えたかも、どれだけ多
くの人の人生に影響を与えたかも、決してわからないでしょう。時間をかけた甲斐
があったと信じること、それがすべてです。
 健闘を祈ります。

というわけで、エンジニアのみなさまにおかれましては、ぜひ本書を読んで、悪と戦っていただければと存じます。

エンジニアのための時間管理術

エンジニアのための時間管理術


あと、こんな感じだったりこんな感じじゃなかったりで、コンピュータ書について熱く語るのを聞いていただく「このコンピュータ書がすごい! 2009年版」(2009/01/10 18時19時からジュンク堂池袋本店にて)企画は今の所まだチケットがあるようです。参加ご希望の方は、早めに申し込みいただければ幸いです。