高橋源一郎『ニッポンの小説』

百年の孤独 ニッポンの小説

百年の孤独 ニッポンの小説

ようやく読み終わりました。いやーたのしかったです。おすすめ。

まごうことなき高橋源一郎の評論です。『ぼくがしまうま語をしゃべったころ』『ジェイムズ・ジョイスを読んだ猫』『文学がこんなにわかっていいかしら』『文学じゃないかもしれない症候群』『文学なんかこわくない』などの評論系列に連なる最新作。『〜こわくない』のあとがきにあった、『文学の向こう側III』(の代わりの作品)に相当する作品じゃないんでしょうか。

内容としては、以前から語ってきたこととそんなにずれた話はないので、そういう意味で新味はないかも。でも、書き方がこなれてきて、わかりやすくなり、さらに核心に近づいた感じがします。

というか、高橋源一郎の小説論って、正直なところ、永遠に完成することなく、何度も何度も論じ直される、その繰り返しになることが運命づけられているのかも。なので、エピローグのラストはある意味予定調和的でもあるのですが、それがわかっていてもきっと「また、違ったことを試みる」のでしょう。

『〜こわくない』以降、この系列の本が出なくてさみしい思いをしてましたが、待った甲斐はありました。