アジャイル続き

http://d.hatena.ne.jp/takahashim/20060103#c1136479145でkakutaniさんの言う通り、アジャイルは日本でも少しずつ広がりつつはありそうですが、実際のところはまだまだ普及には至っていないでしょう。XPに至っては、すべてのプラクティスを実行できている、という例はほとんどなさそうです。私自身はアジャイルに近い立場にいるので、ちょっと偏っているのですが、それでも現場まで浸透しているとはとても思えない状況です。

元々日本は、ソフトウェア開発ではアジャイル的な手法が使われていなかったようで(といっても、昔のことはよく知らないのですが……)、特に「使えなくなった」とか「海外に盗まれた」ということはないようです。ただ、様々な場面でのコミュニケーションの問題が大きくなり、アジャイル的な手法を求める声が出てきているのだと思います。そういう意味では、「水平的管理」も、「相互監視」というよりも(まさに大野さんが著書に書かれていた意味で)「相互扶助」の側面がクローズアップされています。むしろ、アジャイルの文脈では後者しか見えていないので、前者の意味での危険性にはまったくと言っていいほど触れられていません。そこは現行のアジャイルムーブメントの危ういところだと危惧しています。

また、ソフトウェア開発に限って言えば、日本は(ゲームなどのごく限られた分野を除いて)ずーっと輸入超過に陥っているままなので、特に衰退した、ということもありません。そういう意味で、他の工業分野とは異なり、国内のソフトウェア開発には「古きよき時代」などなかったのかもしれません。

もう一点、大野さんの関心分野からは気になるであろう、XPのプラクティスとして、「週40時間労働(40-hour work)」というのがありました。これは文字通り週40時間だけ働く、というもので、こういうのを開発手法のプラクティスとして掲げる、というところもXPの独自性というか、突出したところでした。ただし、現在ではこのプラクティスは「最適なペース(Sustainable Pace)」というものに置き換わっています。また、このプラクティスも日本ではなかなか実行されていないものの一つです。そりゃそうだろう、とは思いますが。