札幌Ruby会議01のこと

メモ。ちゃんとした、人に伝達することを最優先とした文章としては書けないので。

http://regional.rubykaigi.org/sapporo01

そもそも地域Ruby会議には極力参加したかった。私は曲がりなりにも「Rubyのえらいひと」ということになっており、私の能力で「えらいひと」の責任を果たせるのはとにかく動くこと、イベントがあればとにかく参加することであり、とりわけRubyの会の関わるイベントであれば極力参加するべきだと思っていた(それが関西Ruby会議で果たせないのはかなり残念)。ので、札幌Ruby会議の話を聞いたとき、当然参加することを考えた。

というよりも何よりも、それが札幌だったから。

北海道、というよりも札幌に思い入れがある。OSC Hokkaidoにもちょくちょく参加しているのは、帰省の口実でもあるのだけれど、札幌は特別な場所だから。生まれた土地としての東京にはあまり愛はなく(おぼえてないので。今生活している場所としての東京にはそれなりの思いもある)、育った土地である札幌が私の場所だと思っている。

ということで、一般参加者として参加登録をしたら、Ruby札幌の島田さんからLTの依頼が来た。

うれしくはあった。が、乗り気ではなかった。なんとなく恥ずかしいものがあった。Rubyについて詳しいひとなら他にもいるし。ただ、今はRuby 1.9について広めることが最優先だと思っていたので、そんな話をすることで受諾した。

そして内容を考えていたのだけれど、あるときふと、疑問がわいた。私がふつうにRuby 1.9の説明をしたところで、誰も何もうれしくないというか、何の意味もないのではないか。私が札幌でしゃべるのであれば札幌の話をしなければならないのではないか。ただ、Rubyは札幌時代は使っていなかったので、Rubyと札幌を実体験として語るのは難しかったのだけれど、そこはちょっとひねれば接続できるだろう。そうして札幌の話をするべきだ。そう考えた。

だが、その方向転換は地雷だった。

Ruby札幌のひとたちは、札幌にこだわりを持ち、そして札幌でRubyやその他のことを広めようとしている人たちだ。島田さんとはつい先日、OSC 2008 Tokyo/Fallで会った時も、札幌で活動することの難しさについて、二人で話したばかりだった。

しかし彼らはそれでも札幌で活動しているのだった。私は札幌を出て、東京に来てしまっているのに。

端的に言えば、私は「裏切者」なのだった。

しかも、こう書くと、いやいやそんなことないですよ、札幌の活動にも参加してもらってますし、と少なくとも表立っては言ってもらえるような安全な位置を確保していた。そう自覚している程度には狡猾でもあった。

そんな私が、どのつら下げて札幌でしゃべるのだろう? そんな気もしないではなかった。

感情的な問題はおいておいたとしても、実際のところ、どういうメッセージを伝えるべきなのか。Rubyができれば札幌でもやっていけるよ、というメッセージは、少なくとも私が言えるわけもないし、説得力もゼロだ。かといって、Rubyを足がかりにして東京やその他の場所で活躍する、というモデルは、もちろんそれを望むひとにとってはRubyが力になることはあったとしても、それをRuby札幌の人々の前で言うわけにはいかなかった。

思い悩んだ挙げ句、その辺りはあまり突っ込まず、とにかくRuby 1.9というまだまだマイナーな場所の力というものは確実にあり、その力は住んでいるところの影響は少ないと思われるので、1.9を使いましょう、とさほど肩肘を張らずに主張してみることにした。札幌に居続けるべきなのか、札幌を出るべきなのか、それは難しい選択だ。正解もない。しかし、それ以前の話として、今札幌にいる人たちに対し、札幌にいることが間違いではないこと、札幌でRubyに触れることには未来があること、そのためには1.9を使ってみてほしいこと、それだけは伝えられるのではないかと思った。伝えるべきだと思った.

発表直前まで、Ruby1.9を使うべき理由は3つほど書いていたのだが、どうにも時間が足りなさそうだったので、1つに絞った。これが良かったのだろう。発表自体は5分の銅鑼が鳴るちょうどで発表できた、はずだ(ニコ動にアップされている動画は見ていない。恥ずかしくて見られない)。

たぶん、札幌だったから、上手くいったのだろう。札幌でしか使えない魔法を使っていたのだ、と思っている。

本当は、内地から来た人には通じないくらいに道民向けの発表にしたかったのだけれど、まあその必要もない。もっと札幌のことを語るには、今の札幌事情に精通しないと難しいだろう。正直、これが今の私の限界だと思う。

蛇足ながら付け加えておくと、東京東京と連呼しているのは、札幌からは東京以外の内地の都市はほぼ見えないに等しかったから。東京だけが別格だった。なので、札幌にいたころはとにかく東京を意識して、それ以外の都市はぜんぜん知らなかった。これは私というよりも、札幌の特殊事情なのかもしれない。

また、スライドの全体が上寄せに偏っているのは、椅子席でステージもなく、スクリーンが低めだったため、急遽書き直したからでもある。見た目の美しさよりも可読性を重視しているのは、言い訳ではなく自慢だと思っている。


最後に何よりも、島田さんを始めとするRuby札幌のみなさま、そして来ていただけた方々と、残念ながら参加できなかったけれど北海道でRubyを頑張っている方々には、心から感謝しています。ありがとうございました。